採用に中小企業診断士は使えるか|依頼できる範囲と限界を整理

応募を増やす(募集・母集団)

「顧問税理士から中小企業診断士を紹介されたのですが、採用って頼めるものなんでしょうか」——最近、そんな相談が増えました。結論からお伝えします。中小企業診断士に依頼できるのは、経営と紐づけた採用計画・要件定義・求人票の言語化・補助金設計までです。候補者の紹介やスカウト送信そのものは、原則として人材紹介や採用代行の役割になります。つまり「戦略と設計は診断士、集客と紹介は別プレイヤー」という分担図です。本記事では、診断士に頼める範囲と限界、依頼の3つの型、料金相場、人材紹介・採用代行との使い分けまで、採用担当の方が明日から動ける形で整理していきます。

なぜ採用相談の場に「中小企業診断士」の名前が出るのか

採用相談の場で診断士の名前が挙がる背景には、経営と採用が地続きになっている中小企業の事情があります。顧問税理士や商工会議所の窓口を経由して「まず経営全体を見てくれる人」として紹介されるケースが多く、採用単体で始まる依頼はむしろ少数派です。ここでは、その入り口となる3つの理由を整理します。

診断士に採用を相談する|3つの入り口
経営全体を見ながら採用を語れる相手として選ばれる背景
1
顧問経由の紹介
顧問税理士や商工会議所の窓口から「経営全体を見る人」として紹介される導線
2
経営課題からの派生
事業計画や補助金申請の相談から採用の話題に自然に広がるパターン
3
組織図の言語化
組織図と採用計画を経営戦略と紐づけて言語化するニーズから始まる依頼
※ 採用単体で始まる依頼は少数派。多くは経営相談からの延長線上にある。

中小企業診断士は経営全般の相談役という位置づけ

中小企業診断士とは、中小企業支援法にもとづく国家資格で、経営全般の診断・助言を行う専門家のことです。例えば、事業計画の見直し、資金繰り、事業承継、そして採用計画までを横断的に扱います。独占業務は持たないぶん、経営者の隣で全体像を整理する伴走者としての性格が濃い資格と言えます。中小企業庁の中小企業向けポータルサイト「J-Net21」でも、経営相談の入り口として診断士が紹介されている場面が目立ちます(出典:中小企業庁『J-Net21』2025年時点)。

「税理士は数字、社労士は労務、弁護士は法務」と整理したうえで、経営全体を横断的に見るポジションが診断士です。採用は経営課題の一部として扱われるため、「採用相談だけの専門家」ではなく「経営会議に採用を組み込む相談役」と捉えるとイメージが合います。私たちジンザイラボ編集部のオンライン相談でも、「診断士さんに紹介された」と入り口を教えてくださる経営者の方は珍しくありません。

採用は経営課題の中でも上位に食い込んでいる(人手不足倒産の増加)

★STAT:帝国データバンクの調査によると、2024年の「人手不足倒産」は342件で、2013年の調査開始以降で最多となりました(出典:帝国データバンク『人手不足倒産の動向調査(2024年)』2025年1月公表)。前年から3割超の増加で、業種は建設・物流・介護・小売など、まさに中小企業が支えてきた領域が中心です。もはや採用は「攻めの投資」ではなく「守りの経営課題」と言い換えたほうが現場感に近い数字です。

現役の中小企業診断士が発信するYouTubeチャンネル『社長が3ヶ月不在でも事業を拡大する方法』では、動画「【中小企業 採用】中小企業の採用の現状とは?」(YouTube)で「応募が集まらない中小企業ほど、経営計画と採用計画が分断されている」と語られています。私たちも同じ景色を現場で見てきました。売上目標だけ引き上げても、それを支える人員計画が空欄のままだと、採用は「とりあえず募集を出す」で終わってしまいます。診断士に採用相談が持ち込まれる理由は、この分断を修復する伴走が求められているからです。

商工会議所・補助金窓口経由で接点が生まれるケースが多い

初対面の接点は、意外にも「補助金」や「商工会議所の経営相談窓口」が入り口です。事業再構築補助金・IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金の相談で診断士とつながり、その延長で「そういえば人が採れなくて…」と採用の話が始まる、という流れが典型です。人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金など採用と直接つながる助成金もあるため、金の話から人の話に自然と接続します。

つまり、多くの経営者の方にとって、診断士は「補助金の申請書を書いてくれた人」の顔で登場します。ここで初めて、採用にも相談ができるらしい、と気づく流れです。この入口の特性を踏まえると、初回相談で「補助金の話”だけ”の人」なのか、「採用の設計にも踏み込める人」なのかを見極める視点が要ります。

採用領域で中小企業診断士ができること/できないこと

診断士は採用の万能薬ではありません。強みは経営戦略と紐づけた採用計画の言語化にあり、守備範囲外は候補者本人の紹介や面接代行です。この線引きを最初に握らないと、期待と成果のズレで消化不良に終わりがちです。ここでは、できる領域と、できない領域を4点で切り分けます。

中小企業診断士|採用領域で「できる/できない」比較
依頼前の期待値調整を1枚で完了させる
項目 対応度 コメント
採用計画・要件定義 経営戦略と紐づけた計画の言語化が中核領域組織図・人員計画・要件の整理
求人票・面接設計 要件から逆算した設計まで支援可評価基準・質問項目の設計
候補者紹介・スカウト × 本人の紹介は業務範囲外人材紹介会社の領域
面接代行・オンボーディング 設計は可だが実行代行は原則外RPO・自社人事の領域
※ ○=強み領域 △=条件付き対応 ×=業務範囲外

できる:経営戦略と紐づけた採用計画・要件定義の整理

診断士がもっとも力を発揮するのは、「なぜこのタイミングで、この職種を、何人採るのか」を経営計画から逆算する整理です。3年後の売上目標と組織図、必要ポジション、そこから逆算した年次採用計画。この設計図が言葉になっていないと、募集要項も面接基準もぶれます。診断士は経営者の頭の中を、資料化された計画に落とす作業が本業です。

例えば「営業を1人採りたい」という相談を持ち込んだとします。診断士は「新規開拓か既存深耕か」「単価いくらの案件を担うのか」「3年後、その営業に何人の部下がつくのか」まで質問を重ねます。この一手間で、要件定義が「営業経験3年以上」から「新規開拓に強い法人営業経験、業界問わず、単価100万円以上の商材経験」へと具体化されます。募集要項の解像度が変わると、応募者の質も変わっていく、という流れです。

できる:求人票の構造化・自社の強み言語化・面接設計の伴走

診断士のもう一つの強みは、経営者本人が言葉にしきれていない自社の強みを、外の目で構造化することです。「うちは家族的な雰囲気で」だけでは求人票は書けません。診断士は、財務データ・事業計画・現場ヒアリングを踏まえて「なぜこの会社で働く意味があるのか」を求人票の見出しに翻訳します。

現役の中小企業診断士が運営するYouTubeチャンネル『中小企業診断士 / 平井あずま』の動画「2025年オススメの中小企業診断士×Web集客×採用コンサル」(YouTube)でも、集客導線の設計と求人票の言語化を診断士業務として位置づける旨が語られています。私たちが伴走した中小企業でも、求人票の主語を「当社は」から「入社後に担当する仕事は」へ変えるだけで、応募者の書類選考通過率が動いた事例が複数あります。面接設計も同様で、「何を聞くか」より「何を判定したいか」を先に決める作業を、診断士は淡々と伴走します。

できない:候補者本人の紹介・スカウト送信・エージェントの代替

一方で、診断士は候補者を直接紹介する立場ではありません。これは資格の性格上、当然の線引きです。人材紹介業として候補者を送り込むには、有料職業紹介事業の許可(厚生労働省)が別途必要になります。診断士資格そのものは職業紹介の免許を含みません。

同じく、ダイレクトリクルーティング媒体でのスカウト送信、求人媒体の運用代行、応募者対応の一次窓口といった「手数のかかる作業」も、原則として診断士の守備範囲外です。ここは採用代行(RPO)や人材紹介エージェントの領域と割り切ります。現役診断士『ゆるちーばちゃんねる』の動画「中小企業診断士が語る採用成功への道:求職者対応編」(YouTube)でも、求職者対応の設計と実運用は分けて扱われています。診断士に「候補者を連れてきてくれ」と丸投げすると、期待値のズレで関係が壊れる原因になります。

できない:面接や入社後のマネジメント代行

面接の代行、入社後のオンボーディング運用、人事評価の日常運用も、診断士の主業務ではありません。「設計図を書く」までが強みで、「設計図を毎日運用する」のは経営者・現場マネジャー、あるいは採用代行・人事コンサルの領域です。ここを混同すると、「診断士を月額で雇っているのに現場が動かない」という愚痴が生まれてしまいます。

ジンザイラボのオンライン相談でも、「診断士さんとは採用計画を作ってもらったが、そのあとが止まった」という声を何度もいただいてきました。設計と運用を同じ人に頼む前提でいると、費用対効果は必ずどこかで折れる、というのが私たちの実感です。診断士は「計画づくりの伴走者」、日々の運用は現場と分担者に、と役割を切り分けておく判断が要ります。

中小企業診断士に採用支援を依頼する3つの型

中小企業診断士への採用相談は、実際には大きく3つの型に分かれます。自社が今どのフェーズにいるかで、選ぶべき診断士も、依頼する成果物も変わります。ここではその3類型を整理し、どの型が自社に合うのかの判断軸を提示します。

診断士への採用依頼|3類型で選ぶ
自社のフェーズに合わせて型を先に決める
採用設計型
向いている企業初めて計画的に採用を始める従業員10〜30名規模
主な成果物要件定義書・求人票・面接設計シート
相場感プロジェクト20〜50万円
補助金活用型
向いている企業人材開発助成金や事業再構築で採用を絡めたい企業
主な成果物申請書類・事業計画・採用計画パッケージ
相場感着手金+成功報酬型
経営統合型
向いている企業経営と採用を一体で顧問に見てもらいたい企業
主な成果物月次レポート・経営会議同席・組織改善提言
相場感顧問月3〜10万円
※ 相場感は診断士の経歴・地域・成果物の本数で変動する。契約前に見積り確認を推奨。

①採用の設計型:ペルソナ・要件・給与レンジを一緒に決める

もっとも需要が多いのが、この採用設計型です。求人票が刺さっていない、面接で見るポイントがバラバラ、給与レンジを決められない——このあたりの「土台づくり」を診断士と一緒に固めます。ペルソナの定義、要件定義書、募集要項ドラフト、面接評価シートの4点セットが典型的な成果物です。

社労士・中小企業診断士のダブルライセンスで発信する『新居輝英@社労士・中小企業診断士』チャンネルの動画「中堅中小企業のひと味違った新卒採用方法」(YouTube)でも、新卒採用の接点設計を含めた「土台側」を診断士業務として提供する例が示されています。私たちも同じで、「まず土台を書き出す3時間」を作るだけで、その後の人材紹介・採用代行への発注精度が跳ね上がる場面を何度も見てきました。応募が来ない原因の多くは、実は土台の欠落です。

②補助金・助成金活用型:人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金などの活用計画

2つ目は、補助金・助成金を採用と絡めて設計する型です。人材開発支援助成金(訓練経費・訓練期間中の賃金の一部を助成)、キャリアアップ助成金(非正規から正社員転換への助成)が代表格で、いずれも厚生労働省管轄の制度です。診断士のなかには、この申請支援を主戦場にする人が一定数います。

ただし注意点があります。助成金は「要件を満たす制度設計」と「正確な申請書類」の両輪でしか受給できません。診断士は制度設計側で強みを発揮しますが、社労士の独占業務である労働・社会保険の申請代理は行えません。実務では、診断士と社労士が組む座組が現実的です。「必ず取れる」と言い切る診断士には、私たちも警戒します。制度は毎年見直しが入り、要件は動きます。

③経営全体×採用型:中期計画と連動した組織図・採用ロードマップ設計

3つ目は、いちばん重厚な型です。中期経営計画そのものを診断士と作り直し、その中の一章として採用ロードマップを組み込みます。3年後の売上・粗利・組織図・必要ポジション、そこから逆算した年次採用計画、教育計画、評価制度までを一枚で描く作業です。事業承継や経営者交代のタイミングで着手されるケースが目立ちます。

現役診断士『中小企業診断士の部屋』の動画「withコロナ新卒採用の常識【中小企業診断士の部屋】」(YouTube)でも、採用単体ではなく経営の中で採用を位置づけ直す視点が語られています。この型は工数も費用も大きくなりますが、そのぶん「毎年の採用がぶれない土台」が手に入る型と言えます。腰を据えて経営基盤を作り直すフェーズの中小企業には、この型が最短ルートになる場面が出てきます。

料金相場と補助金の考え方

料金は「診断士本人の経歴」「契約形態」「成果物の本数」で幅があります。相場の骨格を掴んだうえで、単発スポット・顧問契約・プロジェクト単位のどれで握るかを先に決めるのが安全です。ここではおおよその目安と、補助金を絡める場合の考え方を整理します。

中小企業診断士の料金相場|3パターン
契約形態を先に決めてから見積り確認へ
スポット相談
単発の相談・壁打ち
1〜3万円
1〜2時間/回
向いているフェーズまず打ち手を試したい初動段階
顧問契約
継続伴走・月次同席
3〜10万円
月額/継続
向いているフェーズ経営と採用を並走で回したい段階
プロジェクト単位
要件定義〜求人票一式
20〜50万円
1案件/2〜3ヶ月
向いているフェーズ成果物を明確に握って進めたい段階
※ 相場は診断士の経歴・地域・成果物の本数で変動。補助金活用時は着手金+成功報酬型もある。

スポット相談:1回1〜3万円が目安(1〜2時間)

まずは1〜2時間の単発相談から始めるパターンです。目安は1回1〜3万円。「採用計画の壁打ちをしてほしい」「求人票をレビューしてほしい」「補助金の対象になるか教えてほしい」といったピンポイントの用途に向いた形です。

現役診断士『診断士社長えだもんの補助金·助成金の話』チャンネルの動画「【中小企業診断士の年収】仕事内容・メリット・デメリット全部話します。」(YouTube)でも、スポット講演・スポット相談が数万円〜の価格帯として実例で示されています。初回はこのスポットで相性を見てから、顧問やプロジェクトに切り替えるのが失敗の少ない進め方です。1回で全てを解決しようとせず、「土台の棚卸しだけ」など目的を絞って持ち込むほうが、時間当たりの得るものは増えます。

顧問契約:月額3〜10万円(月1〜2回の訪問+メール相談)

継続伴走を頼みたい場合は、顧問契約が定番です。相場は月額3〜10万円で、月1〜2回の訪問(またはオンラインミーティング)+メール相談が標準的な組み合わせです。診断士のキャリア年数、業界特化の強さ、対応可能な範囲(経営全般か採用中心か)で価格が上下します。

現役診断士『中小企業診断士てぃむのどうが』の動画「【中小企業診断士】仕事の単価、教えます!」(YouTube)でも、月額3〜10万円の顧問契約帯が実務相場として言及されています。顧問で握るときのコツは、月次の議題を「経営全体」ではなく「今期の採用KPI」など具体テーマに絞ることです。テーマが漠然としていると、雑談で1年が終わってしまうこともあり得ます。

プロジェクト単位:採用計画策定20〜50万円などプロジェクト規模で見積り

「3年先の組織図と採用ロードマップを、プロジェクトとして半年で作り切る」といった型はプロジェクト単位で見積もります。相場は20〜50万円が目安で、成果物の本数(採用計画書・要件定義書・面接評価シート・組織図・給与テーブルなど)で価格が上下していきます。

プロジェクトで頼むときの安全策は、契約書に成果物の本数と提出期限を明記することです。「採用計画を策定する」だけでは、何をもって完了かの共通認識が曖昧になりがちです。「A4×20枚の採用計画書+要件定義書3職種分+面接評価シート3職種分を◯月末までに納品」といった粒度まで書き込むと、双方の期待値がそろいます。

補助金・助成金を絡める場合は申請の型に載せる工数も費用に含まれる

補助金・助成金を絡める場合、申請書類作成の工数も費用に含まれる点は先に共有しておきます。事業再構築補助金など経営革新系の申請支援は、成功報酬型(採択額の10〜20%)が一般的で、着手金+成功報酬のハイブリッド形も存在します。人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金など労務系は、社労士の独占業務が絡むため、診断士単独では申請代理ができません。

「診断士+社労士のチーム」で座組を作れる相手だと、採用と労務の申請を切れ目なく回せます。この座組を最初から持っている診断士に当たると、進行はぐっと楽になっていきます。逆に、診断士一人で全て抱えようとする相手だと、途中で工程が詰まる懸念が出てきます。座組の設計は、最初の面談で必ず確認したいポイントです。

中小企業診断士と人材紹介・採用代行の使い分け

採用の外部リソースは診断士だけではありません。人材紹介、採用代行(RPO)、採用コンサルなど、それぞれ得意領域と料金モデルが異なります。「何を外に出すか」を先に決めておくと、重複コストを避けられます。ここでは4種類の外部プレイヤーの使い分けを整理します。

採用の外部プレイヤー|得意領域マトリックス
「何を外に出すか」を先に決めて重複コストを避ける
戦略
実行
経営全体
採用単体
戦略×経営
中小企業診断士
経営戦略と紐づけた採用計画の言語化・要件定義
戦略×採用
採用コンサル
採用チャネル設計・面接設計・採用ブランディング
実行×経営
顧問社労士
労務手続き・就業規則・入社対応の実務代行
実行×採用
人材紹介/RPO
候補者紹介・スカウト代行・面接運用代行
対象領域 経営全体 ⇔ 採用単体
※ 診断士は「戦略×経営」寄り。実行代行が必要なら人材紹介・RPOと組み合わせる。

戦略・設計→中小企業診断士/要件言語化・組織設計・補助金

繰り返しになりますが、戦略・設計フェーズは診断士の主戦場です。要件言語化、組織設計、補助金活用計画、採用KPI設計。ここが決まらないと、後工程で人材紹介やRPOに依頼しても、「そもそも誰を採るのか」がぶれ続けます。土台を作る役割を、経営を横断的に見る診断士に置く、という配置です。

私たちジンザイラボ編集部が伴走する現場でも、まず土台側を診断士や社内で言語化してから、集客側の外部発注に進む順序を推奨してきました。順序を逆にすると、コストと時間の両方が二重にかかりやすくなります。土台なき集客は、砂の上に家を建てる作業と言えます。

候補者に会う工程→人材紹介/エージェント(成功報酬・年収の30%前後)

候補者に会う工程、つまり候補者を集めて紹介する工程は、人材紹介エージェントの主戦場です。料金モデルは成功報酬型で、採用決定年収の30%前後が相場です。600万円の年収なら180万円前後、と換算しておくと予算感が掴みやすくなります。

人材紹介のメリットは「入社まで費用が発生しない」点、デメリットは「エージェントに握られる情報量が多い」点です。要件定義がぶれていると、エージェント側で条件を絞りきれず、「なんとなく良さそうな人」ばかり紹介される事態にもなりかねません。診断士との土台づくりが、ここで効いてきます。依頼書の解像度が上がると、送られてくる候補者の粒度も揃っていきます。

求人媒体運用・スカウト作業→採用代行(RPO)/月額10〜30万円が目安

求人媒体の運用、ダイレクトリクルーティングでのスカウト送信、応募者対応の一次窓口といった「日々の手数」を巻き取るのが採用代行、いわゆるRPO(Recruitment Process Outsourcing)です。中小企業向けの月額プランは10〜30万円が目安で、担当業務範囲と工数上限で価格が動きます。

RPOに頼む前提条件は、要件定義とペルソナが言語化されていることです。ここが空っぽだと、RPO側は「なんとなくスカウトを送る」しかできません。診断士で土台を作り、RPOで実行する、という順序が理にかなっています。私たちも、この分担を推奨する場面が増えています。

面接・オンボーディングの伴走→採用コンサル or 経営者本人が担当

面接の場と、入社後のオンボーディングは、原則として経営者本人か現場マネジャーが担う領域です。ここを外に出しすぎると、「自社に人が育つ土壌」そのものが痩せていきます。どうしても外部の力を借りたい場合は、採用コンサル(面接同席・評価キャリブレーション)や、オンボーディング設計に強い人事コンサルを別途手配する選択肢が広がります。

診断士に面接の同席を頼むこと自体は可能ですが、日々の面接運用そのものを丸投げする発想は避けたい領域です。採用の最終判断は、経営者と現場が握る。ここは変わらない原則です。外部プレイヤーは、その判断を後押しする道具として使い分けていく、と捉えています。

依頼前に整理しておく『採用の愚痴』チェックリスト

診断士に相談する前に、自社の「採用の愚痴」を言語化しておくと、初回相談の解像度が一気に上がります。ここで整理できていないと、相手も打ち手を出しづらく、初回の1〜2時間が「現状ヒアリングだけ」で終わってしまいます。ここでは、事前に埋めておきたい4つの項目を提示します。

診断士相談前チェックリスト|4項目
初回相談の1〜2時間を打ち手の議論に使うための事前整理
※ 埋まらない項目こそ相談の入り口。ゼロ回答でも診断士は現状ヒアリングから設計を伴走する。

母集団:直近1年の応募数・辞退率・書類通過率の数字

まずは母集団形成、つまり「応募者をどれだけ集められているか」の数字を棚卸しします。母集団形成とは、求人に応募してくれる候補者の”母数”を作る工程のことです。例えば、直近1年の応募数、書類通過率、面接辞退率、内定辞退率——この4つを紙1枚に書き出せると、初回相談の会話が一気に具体化します。

「応募が来ない」という愚痴も、数字が入ると打ち手が変わります。応募数が月0件なのか月3件なのか、書類は通るが面接で辞退されるのか、内定を出すが承諾されないのか。それぞれで、直すべき箇所は求人票・面接設計・条件提示と、まったく違う場所になります。数字がないと、診断士も「まず数えることから」しか提案できません。ここは自社で埋めておきたい部分です。

定着:入社後1年以内離職率と、辞めた人の理由(複数聞ければベター)

次に、入社後1年以内の離職率と、辞めた方の理由を可能な範囲で集めます。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」では、新規大卒就職者の3年以内離職率が34.9%、中小企業(従業員規模30〜99人)では40%前後という数字が公表されています(出典:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒)』2023年公表)。「うちだけが辞められている」わけではない前提で、自社の実数を見ます。

辞めた方の理由は、退職面談の記録があれば整理を、なければ関係の残っている元社員に率直に聞くのも有効です。「上司との相性」「業務内容とのギャップ」「給与」「キャリアイメージが描けない」——理由がわかれば、次の採用の面接設計とオンボーディングに反映できます。辞められた事実は消せませんが、次の一手には必ず活かせる情報です。

見極め:採用基準を紙1枚で書き出せるか(活躍している人材の共通項)

見極めの棚卸しは、「活躍している既存社員の共通項」を書き出す作業から始めます。学歴や職歴ではなく、行動特性・価値観・仕事の進め方の共通項です。例えば「初対面でも自分から質問できる」「決められた期限を守り抜く」「ミスを隠さず即共有する」——このレベルまで具体化できると、面接の質問が変わっていきます。

「いい人がいない」の愚痴は、多くの場合「いい人の定義がない」の裏返しです。定義がないと、面接は印象勝負になり、評価者ごとに合否が割れます。診断士は、この定義づくりを外の目で伴走する役割を担えます。事前に自社でラフを書き出しておけば、初回相談で「うちの活躍人材はこの3特性です」と提示でき、そこから議論を始められる状態が整います。

経営:3年後の売上・組織図・必要ポジションのラフイメージ

最後に、経営側の見取り図をラフでもいいので用意します。3年後の売上目標、その時の組織図、必要なポジションのラフイメージ。数字は仮でも構いません。仮でも書いてあるかどうかで、診断士の初回提案の解像度が全く違ってきます。

「3年後、売上を1.5倍にしたい。そのとき営業を今の5人から8人にし、営業マネジャーを1人置きたい」——このレベルの仮置きがあれば、逆算した年次採用計画をその場でホワイトボードに書き出せます。逆に、3年後が空欄のままだと、「では、まず経営計画から」となり、採用の話は先送りです。経営と採用は、地続き。地続きを地続きのまま診断士に持ち込む準備が、初回相談の質を決める、というのが私たちの実感です。

まとめ|『何をお願いするか』を決めてから相談する

ここまで、中小企業診断士に採用支援を頼める範囲と限界、依頼の3類型、料金相場、外部プレイヤーとの使い分け、相談前の準備を整理してきました。診断士は採用の万能薬ではありません。ただし、経営と採用をつないで整理してくれる伴走者としては、中小企業にとって心強い存在です。最後に、明日から動ける3つの一歩を残しておきます。

戦略設計・補助金・経営統合のどれを頼むかを先に決める

まず、自社が診断士に依頼したいのが①採用の設計型、②補助金・助成金活用型、③経営全体×採用型のどれなのかを、社内で先に握ります。ここが決まらないまま初回相談に行くと、話が広がって収束せず、次のアクションが決まらないまま解散、という展開になりがちです。3類型のうち今期の優先1つに絞る、というシンプルな選択が、費用対効果を左右します。

「うちは今、要件定義を固めたいから設計型」「補助金の申請期限が迫っているから活用型」「代替わりのタイミングだから経営統合型」——理由をつけて1つに絞ります。絞れないときは、まずスポット相談で1〜2時間、診断士の目を借りて絞る、という使い方も現実的です。

候補者集めそのものは人材紹介・採用代行と分担する

候補者を集める工程、つまり求人媒体の運用、スカウト送信、応募者との一次窓口は、診断士の守備範囲外です。ここは人材紹介エージェントや採用代行(RPO)と分担します。「診断士に丸投げすれば全部解決する」という期待値だけは、最初に手放しておきたい部分です。

診断士で土台を、RPOで日々の集客を、人材紹介で採用決定を——この分担図をチームで共有できていると、費用の重複が減り、成果への距離も近づきます。診断士に「候補者を紹介してくれ」と頼むより、「うちの要件定義に合う人材紹介会社を紹介してくれ」と頼むほうが、話が早く進む場面もよく出会います。

自社の採用の愚痴を整理してから初回相談に臨む

最後に、これがいちばん大事な準備です。母集団・定着・見極め・経営の4項目を、A4用紙1枚に書き出してから初回相談に臨む。それだけで、初回1〜2時間の中身は劇的に変わります。「応募数がわからない」「離職率がわからない」「活躍人材の共通項が言葉にならない」——この状態のまま持ち込むと、初回は全て現状把握で終わってしまいます。

数字が揃わなくても、”揃わないこと自体”を書いて持っていけば大丈夫です。「応募数は数えていない」「退職理由は残していない」——ここまで正直に書けると、診断士は「まず数える仕組みから作りましょう」と、次の一手を提案できます。採用の愚痴を、数字と紙にする。ここが、診断士活用の第一歩と言えます。

私たちジンザイラボでも、「診断士に相談する前に整理を手伝ってほしい」というご依頼をいただくことがあります。そんなときは、まずオンライン相談で採用の愚痴を吐き出すところから始めています。「うちの状況で診断士が合うのか、それとも人材紹介から入るべきなのか」——その見立てを整理する時間として、まずはご活用いただけます。

よくある質問

Q. 中小企業診断士に採用の相談だけ、単発でしてもいいですか?

問題ありません。多くの診断士がスポット相談(1回1〜3万円が目安)を受けています。まず採用の愚痴を1〜2時間かけて棚卸ししてから、続けて頼むかを判断する形が現実的です。初回で「相性が合うか」「採用領域の実務経験があるか」を見極めるつもりで、目的を絞って持ち込むのがおすすめです。

Q. 採用に強い中小企業診断士はどう見分ければいいですか?

商工会議所や補助金申請の実績だけでなく、「求人票を実際に書き直した事例」「面接設計・要件定義の支援事例」を具体的に語れるかで判断できます。人材紹介や採用代行を取り次げるネットワークを持つかも見ておくと安心です。初回相談で「直近3年で採用領域を支援した企業数と、その職種」を聞くと、実務量が測れます。

Q. 中小企業診断士に頼めば助成金は必ず取れますか?

助成金は要件を満たす制度設計と正確な申請書類でのみ受給できます。必ず取れると保証する診断士は避けたほうが安全です。人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金など、採用と隣接する助成金の設計は診断士が得意な領域ですが、実際の申請代理は社労士の独占業務にあたるため、診断士+社労士の座組で進めるのが実務的です。

Q. 商工会議所の無料経営相談との違いは何ですか?

商工会議所の無料相談は、月に数回・1回30〜60分程度で、初期の壁打ちや制度紹介に向いています。ただし、継続的な採用計画の伴走や、求人票の書き直しといった作業まで踏み込むのは難しい場面が多くあります。無料相談で入口を掴んでから、必要に応じて有料のスポット相談・顧問契約に切り替える、という2段階の使い方が中小企業には現実的な選択肢です。

Q. 中小企業診断士と社労士、採用ならどちらに先に相談すべきですか?

「土台の設計」から入るなら診断士、「労務・給与・就業規則」の課題が先に見えているなら社労士、というのが目安です。採用は「募集要項・面接・入社まで」が診断士寄り、「入社後の労働条件・社会保険・助成金申請」が社労士寄りに分かれます。両者はチームで動く相性が良い資格なので、「診断士と社労士、両方に接点のある事務所か」を初回に確認しておくと、後工程がスムーズです。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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